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〜2台ピアノの演奏会を普及させたい〜 ピアニスト 吉田昂城さんインタビュー

2022年3月5日の郡山交響楽団第2回公演”未来へ繋ぐ音楽会”にてソリストを務めていただくピアニスト 吉田昂城(よしだ こうき)さんの生い立ちや、本演奏会に向けての意気込みなどをインタビューさせていただきました!


ピアニスト 吉田昂城

ピアノは3歳から始めました。幼稚園の頃にピアノ教室から聞こえてくる音に惹かれ、ピアノを習い始めました。子供の為のコンクールにて受賞後、本格的にピアノを勉強しました。その時から今に至るまで夢は変わらず「ピアニストになりたい!」でした。

東日本大震災

そんな僕に転機が訪れます。中学3年生の卒業式の日でした。卒業式を終えて家で休んでいたところ、経験したことのない地震にあいました。東日本大震災です。地震のあった当日は中学校に避難します。余震や津波の心配がひと段落してから、家に帰ります。幸い家は軽度の被害で済み、地震で散らかった家の片付けをしていると玄関のベルが鳴ります。今も忘れもしない光景です。マスクと白い防護服を装着していた自衛隊員が目の前にいて、避難指示を受けました。理由もわからず言われるまますぐに浪江町から避難することとなりました(自宅は第一原発から8.8キロの場所に位置)。その後浪江町には5年間、戻れませんでした。

避難先の高校で掴んだオーストリアへの派遣

相馬や会津の親戚を頼りに避難し、数ヶ月した後に相馬での高校生活が始まります。学校に掲示してあった “被災学生オーストリア派遣プロジェクト”(オーストリアとオーストリアのロータリーの文化交流事業)のポスターを偶然見つけました。それまで海外旅行をしたことはありませんが、ピアニストになりたい目標があったので憧れの音楽の都へ行きたくて、すぐに申し込みました。3週間、20名ほどの仲間達と現地でいろんな人々や文化に触れることができたのは素晴らしい経験でした。

転機となる演奏  大使館でのピアノソナタ第8番「悲愴」

日本に帰ってから、オーストリア大使に学生代表としてお礼のご挨拶に伺わせていただきました。当時、ドイツ語はもちろん、英語も満足に喋れません。そんな僕をみて、同行していただいたロータリーの方がピアノを弾くように勧めてくれました。大使館にはベーゼンドルファーのピアノが置いてあり、ベートーヴェン作曲ピアノソナタ第8番「悲愴」を演奏しました。これをきっかけに僕の人生が大きく変わりました。

浪江の家に取り残された自分のピアノ

聴いていただいた大使からオーストリアで音楽留学するように強く薦められます。当時は、日本の音大に進もうとはなんとなく考えていました。しかし自分のピアノは浪江の家にあるので、そもそも浪江に立ち入ることやピアノを持ち出すことができません。避難で点々と住む場所が変わっていたので、街の楽器屋さんに頼んでピアノを弾かせてもらい、高校に進んでからは学校のピアノ、避難していた家になんとか電子ピアノを用意するなど、練習するにも環境は充分とは言い難い状況です。その話を大使にすると、ピアノを持ち出せるよう浪江の町長にお願いの手紙を書いてくれたのです。そのおかげで自分のピアノと1年ぶりに再会しました。久しぶりに会う自分のピアノを触るととても懐かしく、感慨深いものでした。

吉田昴城さん 郡山交響楽団
浪江から救出したピアノを弾く吉田さん

  それを機に、2530地区のロータリーを始め皆様のご尽力でオーストリアのブルックナー音大に飛び級で高校留学することとなりました。現在はウィーン国立音楽大学に籍を置き、勉強中です。

一緒に挑戦してきた仲間、藤川有樹さんとともに

 今回の公演では、ポルトガルのピアノデュオのコンクールで1位を受賞したバッハの2台のチェンバロのための協奏曲を藤川有樹くんと一緒に演奏します。藤川くんとはコンクールの際も一緒に挑戦した仲間です。彼と一緒にこの曲を福島のお客さんの前で披露できるのが楽しみです。

もう1曲は、メンデルスゾーンのピアノ協奏曲第1番を選びました。留学中は、古典の作曲家を徹底的に学んでいます。メンデルゾーンはロマン派に属しますが、バッハやモーツァルト、ベートーベンの古典派の曲を徹底的に研究した節があります。ロマン派的な私的な表現な中に古典派の音楽のエッセンスが随所に入っていて、聞きやすくもピアニストの力量が問われる曲だと考えています。

音楽家としての目標 2台ピアノの演奏会を普及させたい

留学し、コンクールで賞をいただくなどしてからは、音楽家として活躍の機会が増えてきました。僕の音楽家としての目標がいくつかあります。

ピアニストとしては、2台ピアノの演奏会を普及させたいということ。藤川くんは編曲もします。現在は新しいレパートリー増やし、公演を企画するなど開拓中です。

もう一つは、以前から故郷の福島県にプロオーケストラを作ろうと思っていました。ウィーンを始め、仙台や山形等、音楽が栄えている場所にはプロのオーケストラが必ずあります。音楽界の発展のためには地元にプロのオーケストラが必要です。海外では、ロータリーが企画しているオーケストラの演奏会もあります。

郡山交響楽団と

この帰国している間、若い音楽家たちが自ら結成した郡山交響楽団が誕生した話を偶然聞きました。志は一緒だと思います。公演の動画を観た第一印象は、すごくアグレッシブ。全員が本気になって演奏して、熱気を感じる演奏でした。僕も普段はピアノよりもオーケストラの音楽をよく聞きます。同世代の音楽家たちと本気になって音楽を作れることを楽しみにしています。

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